伝統・地方産業の観光工場化で需要拡大に活路

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経済部では2003年より観光工場化を推奨している
経済部では2003年より観光工場化を推奨している

~経済部が観光工場を推奨~
 経済部(経済産業省に相当)は、台湾の製造業にサービスを追求した観光の国際化を目的に、海外の実例を参考にしたいわゆる「観光工場」への転換を推奨している。これは台湾独特の産業文化と伝統的な工場を「観光工場」に転換させるのが狙いで、製造業のサービス化で経済的な相互利益を拡大させる。地方観光・旅行の市場需要の拡大も視野に入れている。 
 経済部は台湾各地の独特の産業文化や歴史ある伝統的工場から、産業知識を吸収しながらレジャー娯楽的観光工場へと転換させたいとしている。これは、台湾で起こった1990年代初期から従来型産業の海外移転と空洞化が深刻化している事に起因する。この施策として、弱小産業を支援するため製造工程や汚染の改善、技術レベル向上、デジタル化管理、イメージ転換、異業種連盟などの支援策を実施し、2003年に従来型産業の観光価値を見直す指導計画を打ち出した。これが製造業のサービス化「観光工場」である。
  例として、北部地区の陶器やジュエリー工場で製造工程を見学し、また、食品工場を見学しながらビスケットを食べてDIY工場で手作りDIY経験をするなど。最も多く「観光工場」が存在する中部地区では紙業文化が学べる製紙工場や高粱酒工場の酒蔵を見学できる観光工場も人気がある。南部地区の食品工場では台湾名物のカラスミが試食でき、酒造メーカーでは米で作られた酒の生産過程も見学可能。さらに東部地区では化粧品メーカーの工場でメイクでき、変装パーティーの参加も実現できる。 
  政府は、観光と地元産業を結びつけた製造業のサービス化である「観光工場」を永続的に発展させるための一つの契機として捉えている。多岐にわたる産業の観光化のチャンスを模索し、ただの「工場」ではなく、「観光工場」化への変貌を国を挙げて取り組む構え。また経済部が海外の観光工場を参考に2003年から「観光工場」を推進しており、この10年間で1000拠点以上の工場が観光工場化に転じ、その額は約18億台湾ドル(日本円で約60億円)に達した。この結果、観光工場への見学者も年々増加。昨年は1000万人に達し、20億台湾ドル(日本円約65億円)の観光収入を計上した。同時に見学者が見学した工場や企業に対する信頼度やイメージが向上し、商品のブランド価値を新たに創世した実例もあるなど相乗効果も表れている。
 経済部では、今年3つにポイントに絞り観光工場を推奨する、としている。一つは優良観光工場を持つ企業を説明会に招待し、成功事例を他メーカーとシェアさせる。二つ目は未だ観光工場を持たない企業に対して積極的に観光工場化を誘致する。三つ目は国際的な観光工場模範メーカーを選出して、販売店の連携、チェーン店化を推進させ、それによりさらに多くの外国人観光客を台湾に呼び込み、多くの商機を生み出させて経済効果も狙う、としている。
 観光工場による知識とレジャー、娯楽を共有することでメーカーは新しい経営方針を生み出すことが可能になると見られる。それが地方産業、伝統産業の今後の産業転換や新たな選択肢の幅を広げることにもなる見込み。経済部では「今は競争が激しい時代。だからこそさらに多くのチャンスを見つけて産業と観光を結びつけた新しい事業の創設が不可欠」としている。