鳥インフルH7N9初確認 台湾当局は拡大防止に全力

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行政院衛生署中央流行疫情指揮センターは4月24日、台湾で初めて鳥インフルエンザH7N9患者が確認されたことを発表した。元々中国との往来が盛んな台湾では、患者の発生は時間の問題だと思われていたが、翌朝発行された台湾の新聞各紙はいずれも一面トップで報じ、患者の発生は衝撃をもって迎えられた。

 

MRTの駅で配布されているフリーペーパーにも連日、鳥インフルに関する報道が掲載されている。
MRTの駅で配布されているフリーペーパーにも連日、鳥インフルに関する報道が掲載されている。

 

患者は53歳の男性で、3月28日から4月9日にかけて中国江蘇省蘇州に滞在し、4月9日に上海から台湾に帰国した。台湾帰国後の4月12日から発熱、発汗、倦怠感などの症状が見られ、4月16日に高熱のために入院。検査の結果、4月24日になって鳥インフルエンザH7N9への感染が確認された。症状は重篤で、人工呼吸器が取り付けられているが、容態は安定しているという。

 

この男性は当初、中国滞在中に鳥類に接触したり、食用したことはないとしていたが、29日になって、ゴルフに出かけた際に、鳥の糞に接触した可能性があることが指摘された。また、台湾帰国後に男性と接触した139人について検査をしたところ、医療従事者3人に呼吸器系の症状が見られたが、その後の再検査で二次感染は否定されている。台湾での患者は4月30日現在、この男性一人だけとなっているが、台湾当局は被害の拡大防止に全力を注ぐ構えだ。

 

また農業委員会は5月17日から全国の市場に於ける鳥類の殺生禁止措置を、予定より一ヶ月前倒して実施することを発表。花蓮県では4月26日から自主的に殺生禁止措置を実施した。また、新北市でも29日、通常は一ヶ月に一度で行なっていた消毒作業を、一週間に一度に増やす方針を発表。桃園国際空港でも入境者の体調監視体制を高め、水際でのインフル進入を防ぐ。ただ、これらの対策がどこまで有効であるかは未知数だ。

 

台北市衛生局は29日から、インフルエンザ予防のための「6つのNoと3つのYes」を打ち出し、市民に感染予防を呼びかけている。これは「近距離で鳥に餌をやらない」、「鳥インフル流行地に赴かない」、「感染した鶏肉の購入や食用をしない」、「手洗いをする」、「よく加熱する」と言った予防方法を伝えるもの。台北市ではテレビCMや幼稚園での講習など通じて、周知を徹底させたい考えだ。また、インフル初確認以降、ドラッグストアでもマスクを買い求める人が増えていると言う。

 

台北市内の百貨店勤務と言う20代の男性は「今は勤務中もマスクをつけている。着用していない同僚も多いけど、僕は単純に怖いと思うからね。接客業だから感染リスクが高いのは皆承知していると思う」と話す。その一方で淡江大学の男子大学院生は「特に何も対策はしていない。人ごみに近づかないようにしてるくらい。もう夏だし、マスクは暑苦しくて嫌」と話し、「10年前のSARSの時も、親が凄い形のマスクを買ってきたけど、結局誰もつけたがらなかった」と語る。

 

台湾企業に勤める会社員の30代の女性は「最近風邪をこじらせて熱を出したばかりだからちょっと心配。会社からも体調が悪い場合は直ちに病院へ行く様にとの指示が出ている」と語る。「ただ、SARSの時は特効薬がなく発病したら本当に危険、と言われていたから凄く怖かったけど、今回はまだ人から人への感染は認められていないし、タミフルも効果があると言われているから、心配だけど、感染しないように気をつけるしかない」と話す。

 

現段階では、台湾において鳥インフルエンザの発生に伴う大きな混乱は見られていない。しかし、状況の変化によっては急激な感染拡大の可能性もあるだけに、今後の動向を注視する必要がある。