盛夏到来 豪雨対策を迫られる台湾

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台湾ではよく「(旧暦の)端午節を過ぎると夏になる」と言われる。今年は6月12日が端午節だったが、今年は梅雨が例年よりも早く明け、以降は各地で記録的な猛暑に見舞われている。その一方で注意しなければならないのが、前線の活動による長雨やスコール、そして台風の発生である。国土に急峻な山地が多く、地盤が比較的軟弱な台湾では、短時間の降雨でも浸水や土砂災害を引き起こす恐れがある。

 

中央気象局
中央気象局

 

中央気象局の資料によると、台湾で発生する気象災害の95%以上が台風または豪雨によるものとされている。2009年の台風8号の被害(いわゆる「88水害」)では大量の降雨によって南部を中心に浸水、土砂崩れ、土石流が発生し、最終的には死者・行方不明者700人を出す惨事となった。また2010年の台風13号では東部唯一の大動脈である蘇花公路が複数箇所で発生した土砂崩れにより寸断。宜蘭県では立ち往生していた観光バスを別の土砂崩れが襲い、中国からの観光客ら26人が死亡・行方不明となったことも記憶に新しい。

 

一方で豪雨による被害も少なくない。2005年6月12日に発生した集中豪雨では、南部を中心に死者13人、農林水産物への被害は21億元に上った。このほか2006年6月9日の豪雨では、南投県と嘉義県山間部で一日の雨量が700mmを超え、各地で土砂災害を引き起こした。昨年6月12日には台湾北部が豪雨に見舞われ、台北市文山区などで浸水被害が発生。2001年の台風16号による大規模洪水の苦い経験から、豪雨対策が比較的進んでいたと言われている台北市でも被害が発生したことは、市民に大きな衝撃を与える結果となった。

 

これら不測の事態に備え中央気象局では、一定の雨量が観測された、または予測された時点で「大雨特報」または「豪雨特報」を発表している。これは日本の気象局が発表する大雨注意報・警報と同様のものだが、これらの特報には「土砂災害」や「河川の氾濫」、「浸水」などへの警戒呼びかけが含まれる。また、台風の場合は中心付近の瞬間最大風速が17.5m/秒以上を観測した際に「(海上・陸上)台風警報」を発令し、自治体や市民に警戒を促している。

 

また同局では今年1月から、富士通のスーパーコンピューター「京」を導入。2014年まで段階的にシステム増強が続けられる予定で、日々の気象予報業務に加え、台風や豪雨など気象災害の観測、予報能力の向上、長期気象変化の観測と分析などの強化が期待される。亜熱帯気候と熱帯気候に属する台湾の気象観測には困難が伴うだけに、スーパーコンピューターの導入による精度向上は待望の進化だと言えるだろう。

 

しかし気象災害発生の背景には人為的な原因があることも見過ごしてはならない。前述の台北市文山区での浸水は、排水場作業員の作業手順ミスによって雨水の排水が滞ったことが直接的な原因とされている。しかし、急速に進む台北市郊外の宅地開発によって、雨水が土壌に吸収されなくなり、下水管への流入量が増大したことも遠因として指摘する専門家もいる。また、近年山間部で頻発している土石流についても、かつて産業振興の手段として、根が短い檳榔(ビンロウ)栽培が盛んに行なわれたため、土壌の流出を抑えられなくなったことが原因だとされている。

 

台湾は日本と同様、自然災害の多い国である。6月30日に発表された3ヶ月予報では、今年はおよそ3つの台風が台湾に接近または上陸の恐れがあると言う。避けることができない自然災害に対して、どのように対応し、被害を最小限に抑えることができるか、台湾の日ごろからの備えが充分に発揮されることを願いたい。