日台地方議員交流の産婆役を果たす 加地邦雄福岡県会議員

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平成26年に九州国立博物館で開催された「台北國立故宮博物院展」誘致の中心的な役割を果たし、5月26日に福岡市で開催された「全国日台友好議員協議会」設立総会の議長を務めるなど、地方からの日台交流の産婆役を果たしている福岡県議会前議長の加地邦雄氏を事務所に訪ね、その情熱と心意気を聞いた。

「全国日台友好議員協議会」設立総会の議長を務める加地氏
「全国日台友好議員協議会」設立総会の議長を務める加地氏

記者:本日は県議会開催前の忙しい中に時間をいただき、有り難うございます。

   さっそくですが、加地先生は情熱的に日台交流を進めておられますが、その着地点はどこにあるのでしょうか?

加地:それは「人づくり」です。

記者:「人」というのは誰を指すのですか?

加地:日本人です。私は日本人ですから、日本の人づくりをするのが使命だと思っています。

記者:具体的に教えてください。

加地:台湾には、戦後70年を経て我々が忘れかけている日本精神が連綿と続いています。

台北駐福岡経済文化辦事處の 戎義俊・處長(総領事)によれば、台湾では、勇気・忠誠・勤勉・秩序・公益・自己犠牲などの道徳基盤を「日本精神」と呼び、今や固有名詞になっているそうです。しかし、残念ながら、戦後の教育や 経済成長偏重の中で、日本ではこのような道徳基盤が薄れつつあると思います。

これを取り戻すことこそが私の目指す「人づくり」なのです。

記者:日本人が台湾から「日本精神」を学ぶということですか?

加地:そうです。

福岡県議会では、各国の留学生に来てもらって意見交換や交流会を行っていますが、台湾の方から学ぶことは実に沢山あります。

また一例にすぎませんが、台湾を訪問した時に、地下鉄やバスの中で、若い人がお年寄りや身体障害者に先を争って席を譲る光景に接すると、戦前日本が行った教育が世代を超えて受け継がれてきたのではないかと感じます。

記者:日本の教育をベースとした道徳基盤が受け入れられたのは、台湾を植民地として自国の利益のためだけに経営するのではなく、都市計画を遂行し、農業用ダムを建設するなど、現地の人々  に受け入れられる事業を行い、後世に残るインフラ整備などに尽力したからでしょうか?

加地:それも大きい要因でしょうね。

中でも烏山頭ダムと嘉南用水路を建設した八田與一技師は、台湾最大の穀倉地帯の生みの親として中学校の歴史教科書にも掲載されていて、彼の命日である5月8日には台湾全土から多くの人が参列して追悼式が行われるほどです。 2011年の命日には、八田與一紀念公園がオープンし、当時の馬英九総統も出席しました。

苦労してダムや水路を建設した八田技師をはじめ、多くの日本人の行動が「日本精神」の発露として受け止められているのだと思います。

記者:そのような日本精神が「台湾で純粋培養されて残っている」という人もいますね。

加地:それこそ、台湾の人との交流を通じて日本人に学んでほしいことです。そして日本人の持っている素晴らしい道徳基盤を取り戻してほしいのです。

さらに台湾との交流を通じて日本が台湾で、台湾人と一緒にやってきた素晴らしい業績を再認識し、自分たちがその子孫であることに誇りを持って、胸を張って世界に貢献できる人になってもらえば、私の「人づくり」の使命も果たせると思っています。

「人づくり」への熱い思いを語る加地氏
「人づくり」への熱い思いを語る加地氏

記者:先生が特に台湾との交流を重視する理由は何でしょうか?

加地:台湾は世界一の親日国です。また、日本人も台湾に非常な親近感を抱いています。

これは東日本大震災や熊本地震に対する台湾からの迅速で手厚い支援、また台南地震に対する日本からの支援などにも表れていますし、国交が無いにも拘らず2015年には367万人が台湾から来日し、日本から台湾へは165万人が渡ったという数字を見てもうなずけます。

また、両国に共通した文化や自然環境から考えると、あるべき日本の将来を考える切り口として台湾との交流が最適だと考えています。

台湾とは同じアジアの国としてあらゆる面で協力していきたい。経済でも、日本の強いところ、台湾の強いところは補完し合えるし、台湾となら信頼関係を持ったお付き合いができると思っています。

記者:最後に、先生の目指す今後の交流のあり方をお教えください。

加地:私は、日本人が当たり前の国、当たり前の国民としてどうあるべきかを考えるためには台湾との交流を深め、日本精神を再確認することが最も良いと考えています。台湾を鏡として日本を見直すことです。

観光、農業、経済、スポーツなど、それぞれの部門の協力・交流等は、専門家に任せたいと思います。

また、5月に就任した蔡英文総統が「自由、民主、人権、法的支配」という価値観を共有する日本との関係を重視していると伝えられたことは、我々にとっても追い風になると思っています。

記者:これまでのご活躍の詳細についてもお尋ねしたいのですが、時間の都合もありますので、次の機会に回したいと思います。

本日は有り難うございました。

私も微力ながら応援したいと思います。