中華職業棒球大連盟、呉志揚会長インタビュー

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第4回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC:国・地域別対抗野球)の日本代表壮行試合に合わせて2月28日に福岡を訪れた台湾プロ野球の呉志揚コミッショナー(中華職業棒球大連盟会長)がヒルトン・シーホークホテルで本紙のインタビューに応じた。

呉志揚コミッショナー

インタビューには台北駐福岡経済文化辦事處の戎義俊處長(総領事)も同席し、野球談議に花が咲く場面もあった。

本 紙:福岡は昔からプロ野球の本拠地があり、高校野球でも強い学校が沢山あるため、市民は野球が大好きです。

呉会長:はい。ソフトバンクホークスの本拠地ですね。

本 紙:壮行試合が行われるヤフオクドームは東京ドームに次いで日本で2番目に建てられたドーム球場で、市民はこれを誇りに思っています。このような福岡へ台湾球界トップの呉志揚会長をお迎えすることが出来たことを大変うれしく思っています。今日はWBC及び台湾の野球事情について少しお話をお聞かせ下さい。

呉会長:はい有り難うございます。よろしくお願いします。

本 紙:早速ですが、世界野球ソフトボール連盟(WBSC)による世界ランキングでは、台湾は4位ですが、今年のWBCでの目標順位をどこに置いていますか?

呉会長:4位というのは、少年野球も含めたトータルのランキングですね。WBCについては前回の2103年大会では8位でした。それを踏まえて今年も先ずは8位以内に入りたいと思っています。

戎處長:台湾はバルセロナ・オリンピックでは準優勝しました。野球はやってみないと分かりません。ボールは丸いので、どのような形にでも変化させることが可能だと思います。(笑)

呉会長:WBCは短期決戦です。一年間のリーグ戦のような長丁場だとランキング通り4位に納まるかも知れませんが、短期決戦ではどう転ぶかわかりません。最高の状態に持って行けるように準備はしてきたので、更に上を目指したいと思っています。

戎義俊處長(左端)と呉志揚会長(右から2人目)

本 紙:今年のWBCでは、どのチームを一番マークしていますか? 「ここには負けたくない」というところはどこでしょうか? またその理由?

呉会長:韓国ですね。ランキングも高いし手強い相手です。

戎處長:バスケットボールでもそうですが、球技の国際大会では韓国がライバルになることが多いですね。

本 紙:韓国は今回台湾と同じAプールにいますね。日本についてはどう思っておられますか?

呉会長:日本と台湾が共同開催国となったプレミア12のときも日本戦を目標にやって、あと一歩で勝てるところでしたが、善戦虚しく敗れました。日本が強いのは分かっていますが、今回また東京ドームで戦えることを望んでいます。

本 紙:2013年の日台戦は、非常に感動的でしたね。王建民投手が素晴らしかったし、台湾選手の礼儀正しさには日本の多くの人を感動させました。

呉会長:台湾ではこの試合のテレビ中継を人口の半分近い1,000万人が見ました。それほど人気も高く、感動的な試合だったと思います。

本 紙:日本では「甲子園」を目指す高校野球が盛んで、そこからプロに進む人も大勢います。台湾でも同じようなシステムがありますか?

呉会長:日本の「甲子園」にあたる「黒豹旗全国高校野球大会」があり、100校程度が参加しています。プロチームは、ここで活躍した高校球児を喉から手が出るほど欲しがっています。これまでは小学校、中学校、高等学校と上に進むにつれて親の方が野球より大学進学のための勉強を望み、野球から離れていく人も多かったのですが、最近はプロ野球の人気も高まり、給与を含めた待遇も良くなってきたので、プロを目指す人も増えてきました。また、最近は「ドラフト会議」にも社会の注目が集まっています。

戎處長:少年野球のチームも多く、U12、U18などでプレーするシステムも次第に整備されてきましたので、これからが楽しみです。

本 紙:台湾初のドーム球場である「台北ドーム」の完成が当初の予定より大幅に遅れているように聞いています。オープンはいつごろになる予定でしょうか?

呉会長:台北ドームについては、我々も20年以上待っています。しかし政治絡みの問題なので、一概にお答えできなくて残念です。もし関係者間の状況が改善して順調に話が進めば、そこから一年半くらいで完成すると思います。

本 紙:今年のWBCで台湾と日本が勝ち上がって決勝戦で対戦できることを、日本の多くの人が期待していると思います。頑張ってください。本日は貴重な時間をいただき、有り難うございました。

呉会長:もちろん私も日台で決勝戦をすることを願っています。お互いに応援しましょう。

 

台湾チームの活躍や少年野球の話になると途端に表情が緩み、目がきらきらと輝く呉志揚コミッショナーの表情からは、本当に野球を愛し、台湾プロ野球のレベル向上に尽している人だという印象を受けた。

また、同席頂いた戎義俊総領事は、台湾花蓮県鳳林国民小学校の代表チームで、キャッチャーとセカンドを守る野球少年だったという。当時日本では読売巨人軍九連覇の時代。王貞治選手の大ファンでいつか一緒に写真を撮りたいという「夢」を持っていたところ、駐東京台湾大使館の査証部長として王氏のパスポートの更新を手伝った2005年に40年越しの夢を叶えることが出来たという。

台湾野球の頂点に立ち、日本との縁を取り持つ呉志揚コミッショナーと少年野球時代の夢が発展して対日外交に携わることになった戎義俊総領事との間の不思議な「縁」を感じるインタビューとなった。

台湾のチアガールの応援を見る戎義俊総領(左)と呉志揚コミッショナー(右)