日本舞踊とパントマイムで八田與一夫妻の愛を表現

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八田與一・外代樹夫人へ捧ぐ追悼公演「生命の水」が5月27日、新宿のスタジオエヴァで行われた。同公演は、日本統治時代の台湾・台南市で烏山頭ダムと灌漑施設、嘉南大圳の建設に貢献した日本人技師・八田與一氏の5月8日の命日に合わせて企画されたもの。主催は一般社団法人月のしらべ、外代樹夫人役を月妃女さん(日本舞踊家)、八田氏役を鈴木政彦さん(パントマイミスト)が演じた。なお、台湾文化センターの朱文清センター長夫妻も駆けつけ鑑賞した。

外代樹夫人を演じた月妃女さん(右)と、八田氏を演じた鈴木政彦さん(左)

「解説しなくても、台詞が無くても、耳が聞こえなくても、国籍をこえてどなたにも豊かにイメージして頂けるような舞台を」という月妃女さんの思いから、同公演は日本舞踊とパントマイムのみを用いて、セリフなしで八田氏と外代樹夫人の一途な愛が表現された。月妃女さんが日本舞踊とパントマイムをコラボレーションさせた舞台を手がけたのはこれが初めて。言葉はないものの、両者の表情や所作からは当時の八田夫妻が蘇ったかのように感じられる場面が幾度か見受けられた。

妊娠を喜ぶシーン(写真撮影:柴田正継)

月妃女さんによると、良く台湾に通っている日本人建築家から八田夫妻の話を聞き知り、夫妻について調べるうちに外代樹夫人の夫、子供、故郷、台湾に対する純粋な愛に感銘し、外代樹夫人に焦点を当て、同舞台を企画したという。「夫を亡くした終戦後、故郷へ戻らず夫が完成させたダムに身を沈めるという選択をした外代樹夫人。子供がいながらとったこの選択を『子供を捨てた母親』と思われていては死んでも死にきれない苦しみだと思う。私は誇りに思うべく純粋な愛の塊のような方という事を、演じる事で皆さんにお伝えしたかった」(月妃女さん)。

天で再開し、地を見下ろしながら寄り添う二人(写真撮影:柴田正継)

また、月妃女さんは台南市の頼清徳市長とも面識があり、台南で毎年行われる八田氏慰霊祭に合わせ日本舞踊を舞うという話も持ち上がっていたという。月妃女さんは、「今回は残念ながら台南で公演する事は出来ず、日本での公演になったけれど、是非来年はこの公演を台南でもお披露目したい」と今後への期待を語った。

なお、同公演のチケット代3000円の内の500円は、八田與一・外代樹夫人・ダム工事で命をおとした人々の慰霊の為に「嘉南農田水利会」へ寄付される。

(2017/05/27 )