台湾国籍の東山彰良氏が読売文学賞受賞!

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東山彰良氏が読売文学賞を受賞!

 

 第69回読売文学賞(読売新聞社主催)が2月1日付で発表され、台湾籍の東山彰良氏(本名は王震緒)のミステリー小説「僕が殺した人と僕を殺した人」が小説部門としては異例の読売文学賞を受賞した。同21日には帝国ホテルで授賞式が行われ、受賞作に対し、選考委員より「純文学として本質を描写している」と好評を得ていた。

正賞の硯と、副賞として200万円が贈られた

東山氏は授賞式終了後、「日本と台湾のなかでは芥川賞が日本一の文学賞とされているが、作者のなかでは読売文学賞が日本一だと言われているので、賞を受賞できてとても光栄」と話した。さらに、「5歳で日本に移住した事で、人生の早いうちに一つの人生から切り離され、もう一つの人生が与えられた。過ごせなかった人生、ありえたかもしれない人生に対しての『憧れ』や『葛藤』が僕にこの本を書かせたのだと思う」と同書執筆の背景についても触れた。「もし日本に移住していなかったら、台湾で育った普通の人間だったかもしれない」「もし台湾で過ごしていたらどのような人生が待っていたのだろう」など故郷である台湾に対する想いが、同書全体に現れている作品となっている、と述懐した。

代表処の謝長廷代表(左)もお祝いに駆け付けた

同書は、1984年の台湾と2015年のアメリカを舞台に、4人の少年たちの運命を描いたミステリー。台湾の若者がアメリカで殺人を引き起こす“理由”が奥深い作品となっている。東山氏によると、順調に行けば今年の年末に台湾で同書が出版される予定だという。なお、東山氏の台湾を舞台にした作品は2015年に第153回直木賞を受賞した「流」以降二作目だった。

第69回読売文学賞を受賞した作品

一方、今回の読売文学賞に際し選考委員として関わった川村湊氏は、「ミステリー小説は、いままでの受賞作品にはあまりなかったため、異色に見えるかもしれない。しかし、この本は純なる文学の本質的なものを表現しており『まさに文学中の文学だ』」と東山氏の作品について講評した。

読売文学賞は、戦後の文芸復興の一助とするため、1949年に創設。「小説」「戯曲・シナリオ」「随筆・紀行」「評論・伝記」「詩歌俳句」「研究・翻訳」の全6部門において、前年の最も優れた作品が選ばれる総合文学賞。有識者推薦のもと、選考委員の合議によって決定され、受賞者には正賞の硯と、副賞として200万円が贈られる。

第69回読売文学賞を受賞した5人の受賞者