~一門三傑 家族一丸で世界トップレベルの品質・デザインを追い求めて~ ㈱ユニオンアートジャパンコーポレーション 代表取締役社長 廣川啓智氏

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ユニオンアートジャパン本社

 

自身で会社を設立し、現在に至るまで数十年に渡って建材タイルをデザイン、開発してきた㈱ユニオンアートジャパンコーポレーション、代表取締役社長の廣川啓智氏。親子二代、三人が大阪芸術大学卒業の芸術畑の一家だ。現在の最新製品は、環境保護という観点に着目して開発された石目調のインクジェット床タイル。建材タイルを中心に、会社のこれまでの経緯、現在の事業内容と今後の展望について取材した。

廣川啓智社長

廣川氏は昭和47年に台湾芸術大学を卒業後に、大阪芸術大学にて留学。卒業後に起業して、油絵、額縁、掛け軸、色紙、墨汁の販売及び輸出を営んで来たが、後にデザインの本業に回帰し、JCD(日本商環境デザイン協会)の一員として、壁紙やカーペット、タイルを巧みに利用した空間デザインを行ない、日本を始め、台湾、韓国、香港の三越、高島屋等の日系デパートのデザインを担当。約20年前、中国大陸は目覚ましい経済発展の最中に有り、この時に当時中国最大のデパートであった北京阜城門萬通商城(ワンフロア約8,000㎡、13階建て)をJCDのデザイナー30人の手で1年を掛けてデザインし、中国建築業界にて高い評価を得た。

その過程で廣川氏は建材に着目するに至り、自らもタイルを生産するように。タイルを生産するにあたって、1995年から5年間、廣川氏は他のデザイナー等を引き連れて毎年イタリアのボローニャに渡り、最新のタイルデザインや設備・技術について学んだ。廣川氏によると、この時に得た知識が後の事業展開に非常に役に立ったという。また、台湾から日本へ渡った廣川氏は、「日本人とは異なる目線で物事を見つめ、発展させる事ができるという点が、台湾出身である私のメリットだと思います」と自身を振り返る。

建材の中でもタイルは、日本に於いては玄関等の最初に人の目が触れる場所で使用される重要な建材であるが、同社では日本の各種建築に合致したサイズ展開をし、日本国内の大手住宅メーカー各社に採用されている。同社がタイルを供給し、国内にある積水化学の工場でこのタイルとユニット部のプラスチックとを結合させる事でユニットタイルの「クレガーレ」が生産されている。このユニットタイルは、ユニット部には雨が降っても水切りが可能な設計がされており、大手住宅メーカー各社のバルコニーやベランダで使用されているという。タイル部分の生産については、デザインを廣川氏が担当し、中国で工場を展開している台湾企業と手を組んで、一日あたり2コンテナ、年間約600~700コンテナのペースで輸入をしている。最初は少量での生産からスタートし、今では国内大手ハウスメーカー10社に採用される程の商品にまで成長、という成果を残している。同商品は発売以来、一貫して高品質を維持しており、良品率は99.5%以上の数値を記録。「これまで培ったノウハウと、工場の最新技術が合わさる事で、他社の追随を許さない高品質なタイルとなっているのです」(廣川氏)。

日本最大手のハウスメーカーに採用されているユニットタイルの「クレガーレ」施工イメージ

また、積水ハウス社の最先端・最高級の木造戸建て注文住宅であるシャーウッドで採用されているタイルは、廣川氏が長年のデザインの経験を活かして開発した商品が使用されている。外庭やエントランス、エレベーターホールで使用されるタイルで同社のタイルが使用されているのだ。廣川氏曰く「国内取引先の品質要求は非常に厳しく、困難な問題も多い」との事だが、20年以上に渡ってこうした取引先からの品質要求を守ってきたからこそ、評価されているのではないだろうか。

「同社のユニットタイル『クレガーレ』は、排水機構を備えている為、大雨や雪のような悪天候でも敷設した箇所を快適に保ちます。日光を遮断し快適な室温を保つ効果も有るため、夏場の省エネにも繋がります」(廣川氏)。

また、タイルは工場にて人工的に作られる為、山を切り開いて削り出される天然石とは異なり、自然環境への負荷が非常に少ない事がポイントとなるという。同社の石目調タイルは天然石と遜色のない意匠であり、同時にプレスによる立体成型を行っている為、肉眼での両者の判別は非常に困難な水準にまで既に達している。環境保護の観点からもタイルは非常に重要な部材なのだ。

「現在販売されているタイルは、日本以外でもアメリカで非常に反応が良く、販売も好調です。更に台湾企業とタイアップして、最新のイタリア製インクジェットプリンター、大型プレス等の設備を導入し、最大サイズ1200×3300×4.5mmの世界最新の大判薄型タイルを市場に投入しています。この商品は、日本国内はもとより、中国、アメリカ等の大手デパート、高級ホテルに採用されており、東京・大阪の地下鉄構内でも今後採用の予定です」(廣川氏)。

アメリカでも高く評価され、販売実績も好調に伸びているという石目調のインクジェット床タイル

 

家族で夢を追いかけて

廣川氏の家族は、奥様と御子息、御息女の4人。長男の淳志氏は、大阪芸術大学を卒業後にテレビ番組制作会社に10年間勤務。その後、独立しデザイン会社を設立。CMやテレビ番組のCG映像制作をはじめ、近年では公共施設のデジタルサイネージやプロジェクションマッピング制作を手がけるなど、多岐に渡って活躍している。今後は、同社にも加わり、次世代のリーダーになるよう準備を進めているとの事だ。

長男の廣川淳志氏

また、長女の理佳氏も大阪芸術大学を卒業後に大手子供服メーカーに就職し、デザイナーとして7年間勤務。その後、同社に入社。ベビーブランド「Poketto Japan」を立ち上げ、ベビー毛布の図案デザインを担当。大手メーカーが開発したミルクプロテインを配合した特殊素材のミレーを使用したベビー用最高級ミルキー綿毛布は、国内の赤ちゃん本舗にて販売された。その他、最先端の機能性繊維を使用したベビー毛布は海外へも輸出されている。また、こうした商品は、製品自体の開発のみならず、パッケージデザインから広告に至るまであらゆるマーケティングを理佳氏が担当し、管理しているという。

長女の廣川理佳氏
ベビーブランド「Poketto Japan」のベビー毛布。機能性のある最新の繊維を使用。

今年2018年からは廣川氏親子3人でこれまで以上に力を合わせて躍進していくとの事。特に、タイルについては、新たなデザインの商品や、1200×3300mmの大判タイルも投入して商品ラインナップを拡大させ、「親子で共通の夢を追いかけて行きたいと考えています」と廣川氏は話す。

台湾から来日し、今や半世紀近く、廣川氏の人生は毎日新しいデザイン、素材、技術との闘いであり、決して楽な仕事ではなかったという。「日本の大手企業の品質要求は世界トップクラスで非常に厳しく、製品の価値を決めるデザイン・クオリティ・プライスの三拍子が揃うには並の努力では達成出来ません。これまでに様々な困難に立ち向かい、乗り越えて来れたのも、中国、ベトナム、マレーシア等に工場を構える台湾大手企業と共に歩んで来れたからだと思います」と廣川氏。それに加えて、台湾企業の知恵、勤勉さ、資本とイタリア、アメリカ等の最先端の設備とが融合する事で、最高の製品が生まれるのだろう。

これまでの経験・ノウハウを活かし、果敢にチャレンジする廣川氏。最後に、「これからも自分にしかできないことを見つけ出し、大企業相手でも自信を持って突き進んでいく」と力強く語ってくれた。

廣川氏のような日本社会で活躍する台湾人経営者が居てこそ、現在まで日台間での経済交流が盛んに行なわれてきたのだろう。日本で輝く台湾人経営者が今後増えていく事にも期待したい。

 

 

廣川啓智氏来歴

台北市生まれ。台湾芸術大学を卒業後、大阪芸術大学へ留学。卒業後に、日本で起業し、デザインを中心に様々な事業を展開し、成功をおさめる。現在、日台商工交流会会長も務められ、日台間での企業交流を推し進めている。また、発展途上国に住む人々や日本及び台湾の貧困家庭、孤児院に日本製毛布を贈る活動も毎年行なっておられ、社会への奉仕も大事な仕事の一つとされている。