「日台農業及び食品業界交流座談会」が福岡で開催

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日本と台湾の農業・食品の生産と販売に携わる事業者、組合、自治体等による「交流座談会」が3月7日、ホテルオークラ福岡で開催された。

座談会は、台湾から来日した「九州農業視察団」が2日間にわたって行った福岡県内の農業・食品加工施設等への視察の総仕上げとして開かれたもので、日本の最先端技術のプレゼンテーションを受けた後、台湾の農産物・食品輸出についての日本側からのアドバイス、台湾側から出された疑問への質疑応答などに約35人の参加者が真剣に取り組んだ。

最初に挨拶に立った台湾貿易センター(TAITRA:日本のJETROに相当)の黃志芳会長は「この座談会は、東京で開かれたFOODEX JAPAN2019(国際食品飲料展)への参加と並んで非常に重要な会議となるだろう。今日は日本の最新技術を勉強するとともに、多くの関係方面からアドバイスをもらいたい。また忌憚のない議論を通してお互いの理解を深めたい」と述べた。

黃志芳会長の挨拶(左は陳忠正・福岡総領事、右は許育典・台南市副市長)

また陳忠正・福岡総領事は「台湾は日本から様々な恩恵を受けてきた。バナナ、お米などの農産物や上下水道、鉄道、道路などのインフラは現在の台湾人の生活に欠かせないものであり、この場を借りて先ずお礼を言いたい」と前置きした後、「今回この訪問団の団長を務めるTAITRAの黃志芳会長は最年少で外務大臣となり、台湾の外交をリードしてきた逸材であり、現在は対外貿易の先頭に立って尽力されている。黃会長の強いリーダーシップの下に開催された素晴らしい会合を通じて、日台両国の友情と絆が更に発展することを祈念する」と挨拶した。

次いで参加者全員の紹介があり、その後日本側2社のプレゼンテーションに移った。

NECソリューションイノベータ株式会社のプレゼンテーションでは、一つのコンテナの中に「多温度帯域」を作ることによって、エチレンガスによる過度の熟成を防ぐなど、生鮮食品を長時間かけて輸送しても新鮮な状態を維持できる輸送システムの開発が報告された。これによって少量多品種の野菜や果物を、航空便の鮮度を保ちながら安価な船便で輸送することが可能になるという。

NECソリューションイノベータ・中浦秀晃氏のプレゼンテーション

ニシム電子工業株式会社からは、圃場の「見回り省力化と生産性向上」を支援する農業向けITセンサーMIHARAS(ミハラス)のプレゼンテーションがあった。MIHARASは、①特定小電力無線の採用により通信費を抑えて低コストを実現したこと、②データ収集装置とセンサー端末間の無線通信距離を5km以上と広くして、広範囲・大規模圃場の監視を可能にしたこと、③用水管理などが簡単にでき、節水に一定の効果があること。などの特徴を持つことが報告された。

福岡県庁は行政の立場から、県農産品を輸出する際のサポート政策や実施方法について説明した。

この後、フリートーキングに移り、台湾側から「台湾の農産物を輸入している日本企業の意見が聞きたい。どこに改善点があると思うか?」との発言があり、日本側から以下のようなアドバイスや改善点への要望等が返された。

具体的かつ率直な議論でお互いの理解を深めた

福岡大同青果株式会社は「野菜は順調に伸びているものの、果物はマーケットに品質が保証されたものを届けられない問題点がある」と指摘した。

三菱食品株式会社はイオンやローソンなどの小売店舗に加工食品を販売しているが、生鮮食品が多くないことを指摘し、日本にないものや日本にあるものでも供給シーズンをずらせた生鮮食品ならもっと受け入れられるのではないか」と話した。

南国フルーツ株式会社は「パイナップルは日持ちがしないので、品質を考えると大量に在庫できないこと。また形は大ぶりのものの方が売れる」とアドバイスした。

イオンストア九州株式会社は「台湾商品の潜在ニーズは高いが、コストに問題があること。加工品はすぐテーブルに出せるものを開発してはどうか」とアドバイスした。

台湾側もこれらの具体的かつ率直な意見やアドバイスに頷く場面が多く見られ、相互の理解と友好を深める大きい一歩となったようだ。