台湾の舞踊&演劇2団体「フェスティバル・トーキョー12」に出演

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南池袋シアターグリーン

現在、池袋周辺の複数の文化施設で10月27日〜11月25日の日程で、“トーキョー発舞台芸術の祭典”と銘打たれた演劇祭、フェスティバル/トーキョー(略称:F/T)が開催されている。

こうしたなか、台湾から「林文中舞踊団(WCdance)と「再拒劇団(アゲインスト・アゲイン・トゥループ)という2つのパフォーマンスグループが来日し、14日、「シアターグリーン」(南池袋)で記者会見を開いた。

2つのグループは、それぞれ11月15日〜17日(林文中舞踊団)、22日〜24日(再拒劇団)に公演を行う予定。ポイントは、同グループは、主催団体が若手アーティストや団体の自主公演をサポートする「F/T公募プログラム」で国内外の180件の応募のなかから選ばれた11団体のなかの2団体、である点だ。

林文中氏

「WCdance」は、2008年に台湾で設立され、演出兼振付師でもある林文中(リン・ウェンチョン)氏が主宰するコンテンポラリーダンスパフォーマンスグループ。林文中氏は国際的な評価を得ているダンサーでもある。

一方、「アゲインスト・アゲイン・トゥループ」は、社会観察、現象などの分析を表現のベースとし、若者の姿を主な表現対象として捉え、パフォーマンスを行っている演劇集団。いずれも台湾の新しい舞台芸術である。

南管と呼ばれる台湾伝統音楽
南管とダンスが融合した新しい舞台表現「小南管」

午後2時、記者会見の前にシアターグリーン5階の劇場で、報道関係者向けにWCdanceによる南管音楽(台湾で400年前から存在する伝統音楽)の演奏、及びモダンダンスと南管音楽が融合した「小南管」なる舞台プレビューが行われた。その後、カフェに移動し、記者会見となった。

カフェに場所を移しての記者会見

記者会見の狙いは、各公演に先駆けて台湾の文化的背景や南管音楽の見所を分かりやすく紹介するというもの。対応したのは、台北駐日経済文化代表処台北文化センター呉静如センター長、国立台北芸術大学林亍竝副教授、前述の林文中氏。

 

呉静如センター長

呉静如センター長は、「台湾芸術の素晴らしさを日本の人に伝えられればと思います。また、芸術文化を愛する皆様のために今日の記者会見を開きました」と述べた。

 

林亍竝副教授

林亍竝副教授は、台湾の演劇の歴史を大きく4つの時代に分けて解説した。日本統治下に日本の影響(舞踊家・石井漠)下で流行したモダンダンス、1950年代に流行った民族舞踊、1970年・80年代にアメリカのモダンダンスの身体表現技法をもって台湾の風土や風景、伝統的なものを模索した時代(雲門舞集=クラウド・ゲイト舞踊団)、そして、今回の林文中氏のチャレンジ。台湾の伝統的な芸術と西洋文化との融合をユーモアを交えて表現する新しい表現、というように。

「『小南管』という作品を最初、台北で観ました。そしてさきほど再度観まして何か今までになかった新しい表現が誕生する瞬間に立ち会った気がします。これが日本でどう観られるのか、どのようなフィードバックがあるか、興味深い」と述べた。

 また、林亍竝氏は、もう1つの演劇集団「再拒劇団(アゲインスト・アゲイン・トゥループ)」は、台湾の小劇場で活躍する若手演劇グループで、「再び拒否する」という意味の劇団だと述べた。台湾消費社会、アメリカがもたらしたポピュラー文化、背後にある台湾を取り巻く政治や社会の状況に強く反応して社会現象を批判する作品が多い、とした。

 林文中氏は、『小南管』を生み出すためにダンサーを伝統音楽「南管」の世界に派遣した際、断絶した価値観の存在や次第にコミュニケーションを回復していく過程があったとし、「私の興味は、この作品を日本の方が好きか、嫌いかではなく、この作品をどう観てくれるのか、私が提示した伝統に対する考え方をどう捉えてくれるのか、が一番、大事だ」と述べた。

 多くの日本人は台湾の伝統音楽「南管」の存在を知らないだろう。これと接するだけでインスパイアされるのではないか。