日本の不妊治療、少子化問題解決の下支えとなるか?台湾の生殖医療

taiwannp12 Post in 文化・教育, 日台 ー 総合
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急速な「少子・高齢化」が大きい社会問題になっているのは日本も台湾も同じであり、少子化の原因の1つとして、女性の高学歴化や活発な社会進出に伴う晩婚化が挙げられている。女性の結婚年齢が高くなれば、それだけ卵子の活性度が低下し、不妊症へのリスクが高まるからである。

台湾は不妊症対策の一つとして2007年に「人工生殖法」を定めて、活性度の高い卵子提供を受けたり、自分自身の卵子凍結による生殖補助医療を合法化し、人口政策百年回顧與展望(201110)においても「不妊治療に対する人工生殖の発展」をとりあげている。

一方、日本では親子の遺伝的つながりの重視や子供自身の出生情報を知る権利などに関する議論がまとまらず、卵子提供による出産に関する法整備は遅々として進んでいない。そのため、病気による不妊などに限って一部の医療機関が卵子提供治療を実施しているものの、極めて少数例にとどまっている。高額な高度生殖医療費の助成についても「妻の年齢が43歳以下」という条件が2016年に決められるなど制約も多い。

日本産婦人科学会など関係学会の対応も前向きとは言えず、卵子提供を不妊治療に生かすための「NPO法人OD-NET」が立ち上ったものの、治療希望者(レシピエント)に比べて提供者(ドナー)が少なく、現在は新規のレシピエント登録を受け付けられない事態になっている。(同法人のホームページより)

 このような状況の中、日本の不妊症患者に向けて台湾の生殖医療施設「宏孕(ほんじ)ARTクリニック:張宏吉院長」が昨年1218日にホテルニューオータニ博多で卵子提供を中心とする不妊治療の説明会を行い、夫婦同伴者を中心に66人の参加者が集まった。

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詰めかけた大勢の参加者(プライバシー保護のため、写真を加工しています)

 台湾の生殖医療施設が福岡で卵子提供治療の説明会を行うのは、116日の送子鳥医療センター(こうのとり医療センター:頼興華院長)に次いで2施設目であるが、宏孕ARTクリニックにとっては3月の大阪、6月の東京に続いて福岡が3回目の説明会となった。両施設のどの説明会にも予定した以上の人々が詰めかけ、我が国の不妊治療への高いニーズを示すものとなった。

説明会は、張宏吉院長が6年間(2001-2007年)常勤科学者として勤務したニューヨーク大学と同等な先進設備の紹介からスタートし、台湾では20歳代を中心とする若いドナーの登録が多いこと。平均52万台湾ドル(190万円)と米国での治療費の1/21/3という安い費用。初診から妊娠の成否判明までの時間が3ヶ月程度と短いこと。4人の日本人常勤スタッフをそろえている安心感などを説明した。

また、婚姻関係にある夫婦のみが治療を受けられること。患者はドナーの血液型、種族、肌の色だけしか知ることが出来ないこと。生まれる子供の将来の近親結婚を避けるために患者の四親等表がチェックされること。生まれた子供は自分の出自を知る権利は認められないこと。男女の産み分けは禁止されていること。出産に至った患者に卵子を提供したドナーは2度と卵子提供できないことなど、卵子提供治療に関する台湾の法律と手続きが説明された。

次いで日本国内で「タイミング療法、人工授精、体外受精」とステップアップしながら妊娠がかなわず、精神的にも肉体的にも苦しんだ末に同クリニックでの卵子提供治療で子供を授かった2組の患者が子供を抱いて経験を語り、言葉を詰まらせながら「自分たちの幸せを、ここにいる皆様と分かち合いたい」と話した時には、会場に静かな共感の輪が広がった。

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体験を披露したAさん

最後にスピーチに立った張宏吉院長は、大阪、東京、福岡と三ヵ所の説明会を通じて、日本で不妊に苦しみ、治療を望んでいる人が多いことに驚いたと言いながら、米国の生殖医療のトップに立つニューヨーク大学で6年間研究と治療を重ねてきた成果をここにいる人々の苦しみを減らし、家庭に子供のいる幸せをもたらすために使いたいと述べた。

その中で、最高水準の培養室を作った時の周囲とのやり取りにおいて「モノ言わぬ受精卵のために、温度、PH、浸透圧などを母胎と同じ環境にする」というニューヨーク大学精神を譲らなかったことに触れ、最高の技術で、かつ患者さんに時間的、肉体的、経済的に負担を掛けない治療を届けることが出来るとの自信を示した。

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「最高レベルの医療で不妊に苦しむ人々を救いたい」と述べる張宏吉院長

 その後の質疑応答では、同クリニックで治療を受けるにあたっての事前手続き、申し込みから検査・施術・その後のフォローの流れ、妊娠成功率の実績と見込み、必要経費などについて具体的な質問が出され、それに対する丁寧な説明があり、参加者それぞれが自分の事情に合わせた今後の方針を検討する上での参考を得ることが出来たようであった。

日本は不妊治療大国である。2011年には約27万人の人が国内586施設で生殖補助医療(ART治療)を受けている。その中には卵子提供を受けることしか道が残されていない人も多いが、上述のように国内で卵子提供医療を受ける道は非常に狭くハードルも高い。そのため卵子提供医療は高い費用と長い時間を掛けて海外で受けるのが殆どだった。実数は不明だが専門家によると、これまで2,000組以上のカップルが海外に渡航して治療を受けたと推測され、更に厚生労働省研究班(主任研究者・吉村泰典慶応大教授)の調査は「2012年には300400人の子供が卵子提供で生まれていると推計される」としている。

渡航先は主にアメリカで、韓国、タイ、台湾などが続いていたが、韓国は2005年に有償での卵子提供を禁止した。またタイは20157月末の法改正で外国籍患者の治療を規制した。

このような中で、2007年の「人工生殖法」制定後 台湾が渡航先としてクローズアップされ、宏孕ARTクリニックだけでも2012年以降220人の患者を受け入れてきたという。

その他の施設も合わせると台湾において卵子提供医療を受ける日本人患者は相当数に上ると考えられ、高い医療技術と安い費用をテコに「国際医療ツーリズム」の推進に力を入れる台湾は日本の不妊治療、少子化問題の解決を下支えする1つの柱になるかも知れない。

 

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