台湾旧正月の爆竹文化が直面する問題

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台湾の旧正月に欠かせない儀式、その一つは爆竹を鳴らすことである。旧正月期間中は、いたるところで爆竹や花火の音が聞こえ、祝賀ムードを盛り上げる。まさに旧正月の風物詩と言った存在である。しかし最近では生活様式の変化や、爆竹を鳴らすことによってゴミや騒音、大気汚染を発生させると言った問題が深刻化し、台湾人の爆竹に対する意識が変わり始めている。

 

旧正月に爆竹を鳴らす風習は、一説によれば2000年前から続く中国の風習であると言われている。竹を燃やして破裂する際の大きな音を使って悪霊や災いを追い払い、家内安全や商売繁盛を願う。ルーツ的には中国南方からの移民が多い台湾においても、この習慣は脈々と受け継がれ、特に旧正月の大晦日から元日にかけて外が騒がしくなる。最近では夜間においてロケット花火や噴出花火などが使われることもあり、観賞や、遊びの要素も加わっている。

 

しかしながら、ひとたび爆竹に火をつけると、大きな爆音とともに、白煙がもうもうと立ちこめ、あたりには包装紙の赤いカスがちらばる。台北市に住む日本人女性は「大晦日の夜から爆竹の音が絶えなかった。テレビの音が聞こえなくなるくらいだった」と、爆竹の音の大きさを語る。また、台北市の発表によると、2012年の旧正月期間中に台北市に寄せられた爆竹に関する苦情件数は297件に及び、都市化や生活様式の変化によって、爆竹を鳴らす風習が、必ずしも歓迎されていない実情が浮かび上がっている。高雄市に帰省中の男性も「父親が外省人(戦後中国大陸から移り住んだ人)だからかも知れないが、うちでは鳴らす習慣はない」と、爆竹を鳴らさない家庭があることも、社会問題化した一因として考えられる。

 

このため、台北市は今年から爆竹の使用時間と地域の制限を一部改訂し、大晦日と元日は終日の爆竹使用を認めるが、それ以降は午前7時から午後11時までのみ使用可能とし、病院や学校の周囲50m以内では一切の使用を禁止する条例を設け、爆竹使用者に対し、近隣住民や環境への配慮を求めた。また、最近では台北市や台南市などの自治体が「爆竹の音を収録したCD」を配布し、市民への利用を勧めているが、台中市に実家があると言う女性は「CD音源はリアリティに欠ける。それを使うくらいなら、爆竹なんて鳴らさなくていい」と利用には否定的だ。

 

また、爆竹の使用と保管に関しても、その安全性に疑問が投げかけられている。2009年2月9日に建設中だった中国北京の中央電視台電視文化センタービルが、爆竹の火によって全焼する火事が発生し、消防士一人が死亡したことは記憶に新しい。また、2011年4月には新北市五股区で、車両火災の火が仏具店に延焼、店内に保管されていた大量の爆竹に引火、爆発炎上し、少なくとも4人が死亡、38人が負傷し、仏具店を含めた建物4棟が全壊、7棟が半壊する事故も発生した。この際の爆音は台北のほぼ全域に響き渡り、中央気象局が「その年の春になって初めて雷が鳴った」との誤情報を発表する事態にも発展した。

 

台湾人の伝統である爆竹を鳴らす儀式は、時代の変化とともに、新しい社会問題に直面し、儀式自体の変化が問われている。カスが出にくい改良版の爆竹も使用されていると言うが、抜本的な問題解決には至っていない。伝統保存と環境配慮をいかに両立させるのか、問題解決には相当の時間が必要だ。